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茶の湯独特の雰囲気や境地を、世間ではよく「わび・さびの世界」などと呼ぶことがあります。その意味するところは、閑寂(かんじゃく)・清澄(せいちょう)な世界、あるいは枯淡の境地をあらわしています。
さて、このもの静かでどことなく寂しげな境地、あるいは色彩感を否定したような枯淡な趣(おもむき)を美意識として発展させたところに、日本文化の独自性があるでしょう。
もともと、「わび」という言葉は、動詞の「わぶ」(「気落ちする・つらいと思う・落ちぶれる」などの意)から出た言葉で、また、「さび」も動詞「さぶ」(「古くなる・色あせる」などの意)から生まれた言葉です。「わび」という言葉の根元には「思い通りにならないつらさ」があり、「さび」という言葉は「生命力の衰えていくさま」という意味があります。ですから、ともに否定的感情をあらわす言葉なのです。
ところが、こうした否定的な感情をあらわす言葉が逆に評価され、「美を表す用語」として茶の湯の世界や俳諧
などの文芸の世界で通用するところに、日本人独自の美意識や文化のとらえ方があるといえるでしょう。
「わび」「さび」という言葉が、美を感じさせる言葉に変化していくのには、その背景として和歌文学の伝統がありました。平安時代から鎌倉時代に至る和歌的世界で、閑寂・簡素・枯淡の境地が生み出されたのです。

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俳諧 はいかい
俳句。連歌より展開して江戸時代に流行し、松尾芭蕉によって大成された。
Japanese Tea Culture

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