炉の中に入れる灰を作らなければなりません。9月末頃番茶を煮出して灰を練り、4斗樽に入れて保存しておき、天気のいい日には、灰小屋で湿った灰を篩(ふるい)に掛けます。すると少々粗い濡灰が出来るのですが、濡れたまま炉に入れてしまうと、炉檀を傷つけます。湿った灰は、篩の網に付いてしまいすんなりと篩を通ってくれませんので、天日干しをして水分をとばします。
家元の炉壇は深いので、灰の量は30リットルバケツ2つ分くらい入ります。一度に作れる灰の量はかぎられていますので、炉1つ分の灰を作るには、何日もかかりますが、その灰の用意は玄関の大切な勤めです。家元では10以上の炉がありますが、年末から初釜終わりくらいまでは4つほど使用するので、それはたくさんの炉の灰が必要となってきます。
芭蕉の句に「炉開きや左官老行く鬢(びん)の霜」とあり、これは毎年なじみの左官が炉を塗りに来るが、いつの間にか白髪が出てきたよという意味で、月日の巡りの早さを嘆いています。