先代のお家元即中斎宗匠とは、祖母である四世井上八千代のお供で、何度かご一緒したことがございます。そのとき、おいしそうにお茶を飲まれるお姿が何ともいえずいいなあと思って拝見しておりました。祖母が「お茶の飲み方がよくわからず不調法で…」と申したら「おいしくいただけたらええのや」とおっしゃっていたのが心に残っています。
お茶との関わりで申しますと、舞の中に「口切」という演目があります。最初から最後まで服紗を付けて舞い、多少のお点前の振りがあります。服紗さばきもこれでいいのかな、と思うことがありまして、そのことを即中斎宗匠に申し上げました。そうしましたら「まあ、それらしく見えたらそれでいいでしょう。」とおっしゃいました。私も、若い時にもう少ししっかりとお茶のお稽古をしていたら、迷う事なく「お茶はお茶、舞は舞」というように区別がついたと思います。
ただ、「あれだけはやめてな」とおっしゃったのは「夕顔」という舞の時です。お茶を飲む振りをするのですが、「飲み終わった後の、しまい方がどうもおかしいようにみえて…」とおっしゃいました。宗匠に、気になることをおっしゃっていただいたのはありがたいことだったな、と思っています。
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