私の家は「亀屋伊織」と申しまして、全国的にも珍しいと思いますが、お茶席用の干菓子を専門とする菓子屋でございます。創業は定かではありませんが、徳川三代将軍家光公より御所百官名の一つである「伊織」の号を賜ったとの伝承があります。
この創業当初よりお茶席用の干菓子を作っていたかと言えばそうではないでしょう。今日のような形で干菓子がお茶で用いられるようになるのはずっと後のことと聞いておりますし、私の方でも砂糖といえば貴重品でしたので、例えば大名家の贈答用のものなどを最初のころは手がけていたのではないかと思われます。やがていつの頃か、お家元をはじめとしたお茶人さんたちからご注文をいただくようになりました。そうしたお茶のお客様からいろいろなことをご指導いただき、現在のようにお茶席用の干菓子に商品を特化させてきたようです。
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