お茶の席に合う干菓子とはどんなものでしょうか。お茶事で干菓子を使うのは主客ともに緊張のなかにいただくお濃茶が済んで、楽に話を弾ませながらいただく薄茶の場においてです。お道具のことなど様々に話をふくらませる場にお菓子が邪魔になってはいけません。菓子職人が上手に作ろうとすればするほど、細部にこだわろうとすればするほどお菓子は緊張し、職人のこだわりをうるさく主張します。「作りすぎるな」と父はよく言っておりました。作ろうとする気持ちにブレーキをかけながら、気取らずに作ることが大事と私たちは考えています。
先日来より私の方では店の改修工事をしており、これまでしまわれていた古い数多くの菓子木型を目にすることがありました。それらは大きさが適当でなかったり、形が複雑すぎたりして、もともとお茶席用に作られたものかどうか定かではありませんが、また改めて使ってみようと思うものはほとんどなく、やはり現役で使っている型は歴史のなかで淘汰されてきたものであるという印象を強く受けました。煎餅、押物、有平糖など私の店で作るお菓子はみなこうして大きさや形が、お客様からの指導や、私の方での仕事に対する考え方が固まってくるなかで淘汰され、残ってきたものなのです。
|