宗旦は江岑に宛てた手紙のなかで「利休以来、千家では茶の湯や道具のことをあれこれとことばで言うのを嫌い、祖父や父のすることを見て学ぶだけであった」と書いています。それが千家の茶の湯の教えでした。
もちろん宗旦自身もそうでした。宗旦は江岑に次のようなことを語っています。「先日は、ことのほか暑かったので炉をあげたが、また炉になおした。利休居士はたびたびこのようにされていた」。昔は、炉から風炉にかえても、寒暖の具合によって、また炉にもどすこともありましたが、宗旦は祖父の利休居士がすることを見ていて、実際に自分もそのようにしていたのです。
宗旦が利休居士のすることを見て学んだように、江岑も宗旦がすることを見て学びました。それはまさしく利休居士の茶の湯だったのです。そして、見て学ぶことにより、そのおこないの意味を考え、そこに込められた心を学びとったのだと思われます。