『江岑夏書』解説

表千家に伝わる四代家元の江岑宗左自筆の茶書。上・下二冊からなる。表千家に伝来する江岑自筆の茶書として早くから知られていた。寛文2年(1662)から翌年7月にかけて、とくに夏安居(げあんご 陰暦の4月16日から7月15日まで僧がこもって修行をする期間)に書かれたので「夏書」と呼ばれる。江岑宗左がおもに父の元伯宗旦から聞いた話を書き留めた、いわゆる聞書きといわれるもので、道具、点前、作法、茶室、露地のことなど、千家の茶の湯の伝承が一つ書きの形で記されている。『江岑夏書』の一つ書きの順番を入れかえたり、部分的に書き直したりして、清書したものが『逢源斎書』上・下二冊であると考えられている。
江岑の聞書きとしては、このほかに『江岑咄之覚(こうしんはなしのおぼえ)』『江岑聞書(こうしんききがき)』『伝聞事(でんぶんのこと)』などがあり、利休に関する伝承も多く記されていて、利休の茶の湯を知るうえでもたいへん貴重な史料である。