新緑の頃ともなると、木々の間では、虫の類いも成長し、瞬く間に葉を食べ尽くしてしまうことがあります。毛虫などが葉を食いちぎると葉脈が切断し、巻き込み、その内側に虫が巣づくっています。野山の鳥たちはこれを見付けて、咥えて飛んで行き、たまには落とすことがあります。これを巻紙の手紙にたとえて、「落とし文」といいます。
こなしや外郎で出来た木の葉を巻き、中に餡をおきます。これが落とし文です。新緑の頃の清々しい菓子ではありますが、餡は虫であり、外側には白色の小さな外郎などの粒を置くこともあります。実はこれは虫の卵であります。
こういった訳か、千家出入りの「とらや」には、落とし文はありません。御所に毛虫を献上することもなかったのではないでしょうか。
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