初午やそれにつづく二の午・三の午にうってつけの干菓子であります。
平らな煎餅に一端湿気を与え、丸い形にして、再び焙炉(ほいろ)をかけます。円錐形を狐の顔に見立てて、狐の目は焼火箸で細く描かれています。特にてらったことない菓子ではありますが、時候といい趣向といい比類のない干菓子の一つであります。これも茶の湯の苦難の時代に生まれました。考案者は16代亀屋伊織、今の当主のおじいさんであります。明治29年生まれで戦前戦後の混乱期で菓子の仕事のなかった時代です。一生を通じて16代の代表作として残ったのは唯一この菓子だけと、17代の伊織はいいます。
ねじり棒は紅白の有平糖をねじって棒状としています。神社の拝殿の鈴を鳴らす綱をかたどっています。有平糖は作ってからしばらくおかれて、飴が外側から砂糖にもどって、少し飴が芯に残っている時が食べ頃です。形だけではなく茶の味を引き立てることが茶の菓子には大事です。
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