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「荒壁ニ掛物オモシロシ」という利休の言葉が伝えられています。床の中だけは張付壁(紙貼り)を慣(なら)わしとしていたのを、利休は土壁に改めたのです。大切な掛物も土壁に掛けてよい、と主張したのです。これによって茶室の中はすべて土壁となりました。
壁を土で塗ることは、ずいぶん古くからおこなわれてきました。邸宅や社寺などの建物では漆喰塗に仕上げられました。ところが茶室では、土のままで仕上げたのです。待庵では、荒壁の素朴さを出すために、藁の?を表面に散らしていました。京都には聚楽土という、まことに味わいのある土が産出しました。それを水でこねて塗り上げると実に堅牢(けんろう)な壁ができます。
土の色、土の感触、土の香り、土壁から匂い出るたとえようもない味わいを、茶の湯は歓迎したのです。そしてこうした土壁は、茶室をこえて、広く住宅建築に広がっていきました。こんにち床はほとんど土壁でしょう。そういう道を開いたのは、利休の茶室でした。
木と紙と同様に、土も日本の風土に最適な呼吸する素材です。

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漆喰塗 しっくいぬり
漆喰は日本で独特につくられる塗壁材料。消石灰にふのりや苦汁(にがり)などを加え、これに糸屑や粘土などを配合して練ったもの。
 すさ
壁土にまぜる繊維質の材料。壁の亀裂を防ぐつなぎの役目も果たす。
聚楽土 じゅらくつち
壁土の一つ。豊臣秀吉の聚楽第の跡地とその周辺から得られる茶褐色の土
 
Japanese Tea Culture

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