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梅見門の両脇の疎(まば)らな垣は随流垣と呼ばれます。門を潜ると不審菴の内露地です。広くはありませんが深山(みやま)の静けさを感じる一境です。右に内腰掛、その傍らに砂雪隠があります。小さい飛石が、蹲踞へ、そして躙口へと導きます。水鉢礎石を利用したもので少庵の時代から使われてきたものです。
不審菴の外観は、山間の民家を想わせる軽やかで鄙(ひな)びた味わいがあります。柿葺の小さい切妻屋根の前と左の側面に庇を付けおろして、全体が低くなるよう工夫をこらしています。内部は客座三畳敷に、台目構えの点前座がついています。躙口の正面に床を設け、壁を塗廻した火灯口(給仕口)をあけています。客座の上は奥の半分だけ蒲天井をはり、残りは化粧屋根裏のままです。壁面に連子窓下地窓をあけて明りをととのえています。屋根裏には突上窓を切って、茶会の演出効果を高めています。
炉は台目切とし、炉のかどに中柱を立て、袖壁をつけて、二重の棚を吊っています。こうした構えを台目構えと呼びます。袖壁の下から道具の配置が見えるように、竹の止まりを入れています。まっすぐに立ちのぼる赤松皮付の中柱は、細くても力強い大黒柱のような働きをしています。中柱のまわりには、民家のいろり端のような懐かしい団欒(だんらん)の雰囲気が漂っています。
茶道口が点前座の風炉先の方にあいているのは、不審菴の特色で、点前座の脇に板を入れているのも、出入りの便をはかった工夫です。

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水鉢 みずばち
手水鉢のこと。
礎石 そせき
建物の柱の下に置かれる石。
Japanese Tea Culture

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