5_1_5.gif
茶道にかぎらず、わが国の伝統芸能や芸道の習得には、稽古による修養が古くからの習いとされてきました。平安時代の歌人・藤原定家は、「ことばは古きをもちい、心は新しきをもちいる」と語っています。これを「伝統的な型をもって、日々新たな心でのぞむ」茶の稽古の心がまえにおきかえることができるでしょう。
先生の教えにしたがって、初心を忘れることなく稽古を積めば、やがて、稽古にはげむ人の胸中に、茶のこころの深遠に思いをいたす日がおとずれます。茶の稽古がこころの修養としての深みをもち、ながい年月をかさねた茶の湯の所作と日々の暮らしの心がけがひとつになるのです。そのこころを磨く稽古の一途にこそ、主と客のあいだに、自在にこころのかよいを深め、おいしいお茶をもてなし、一服のお茶をかこむ豊かな楽しみをえることができるのでしょう。
利休の点前の伝統は、淡々として水の流れるがごとくすらすらと淀みなく進んであとになにも残さない点前をよしとします。所作がことさら人の目につくことは好まれません。亭主の所作が自然で、飾りけなく、簡素さのなかに心がこもることで、ふかい精神的な境地やこころとふるまいが一体となった奥ゆかしさが、客人の心根に響くと考えられてきました。それが、わび茶の心です。
文字サイズ調整 小 中 大
Japanese Tea Culture

前ページ     75     次ページ