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茶室に生けられる花には、その茶事の季節に、その時期に咲く花を使います。茶室の花は茶事を構成する「季節感」をかもし出す最も直接の役割を果たします。およそ茶事や茶会の主題というのは、根底に季節感をもっており、月々の季節の推移と時々の年中行事が組合され、一年を通じての茶事の興趣をもりあげています。花は季節感を直接に茶室へ運び、自然の美と、花の生命の短くはかないことを教えるものです。「花は時の賞玩」と古人もいい、花の命は短いからこそ、人々に生の喜びをさそうのだとしました。
月々・季節の花
口切の茶11月)は茶の世界の正月として立冬のあと炉の時期半年間の最初に当りますが、この頃は椿の花も咲きはじめ炉の花の代表とされます。多くの種類をもつ椿の花は、冬から春にかけての花の王者といえましょう。利休は白い花を好みとしたといいますが、椿の紅白の取合せもよくみられます。また5月初め立夏を迎え、風炉の時期が半年にわたります。夏の花として木槿の花が代表といえます。
炉の時期の花の一部をみましょう。椿も種類多く、そのなかにも、初嵐・白玉・曙・西王母・加茂本阿弥などの名がよくみられます。寒菊・ろう梅・白梅・桃・にわとこ・寒牡丹などが炉の花としてよく使われます。風炉の時期の花の一部をあげてみましょう。都忘れ・泡盛草・花菖蒲・夏椿・木槿(むくげ各種)・撫子・水引草・貴船菊などがみられます。
茶室に生ける花はその季節の花を生けるのが最もふさわしく、ことさらに珍しい種類の花を追うのはかえって茶事の本旨から遠ざかるものといえます。
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Japanese Tea Culture

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