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茶の湯の道具として、茶室の内にて使われる「用」の役割を果す茶の器物は、まず形や大きさという点に大きな特色を持っています。利休も、その「形(なり)、コロ」がよければ茶の道具であるといっています。またその色彩にも茶の湯の道具としての特徴の数々を持つものです。茶室にて用いる茶の道具の形・大きさという点をみると、まず道具は利休好みを基準としていること、それは茶室に敷く畳に応ずる寸法を持っていることがわかります。この利休好み(あるいは利休形)という寸法をもとに各処の制作人たちが道具を作って、茶室でのもとめに応じていることは、昔も今も変りません。
また道具の形の大小に伴う「色合い」においても、基本は利休好みにあり、その色合いは「黒」を基調としています。
利休の言葉として、「黒キハ古キコヽロ」といい、「赤ハ雑ナルコヽロ」としてきらうのに対し、黒をいかに利休が好んだかを示していました。
茶の道具のすべてが「黒」の一色でないことはいうまでもありませんが、茶の道具はこのように華やかさをおさえ、渋味の勝った、心を静謐(せいひつ)にし、清澄にする黒味を基調とすることがみられます。
さらに、茶室の道具には「銘」がみられます。花入や茶碗・茶杓などに「銘」をつけて、茶の一服を喫する茶室の雰囲気、茶人の心の内に感興を豊かに湧かさせる働きを持たせます。
その器物(道具)の所持者の名、道具のある場所の名をはじめ、道具のもつ形や色合いに応じた銘、四季の風光全般、諸種の歳時の名、慶弔の行事、その他教訓、垂示など「銘」は多種多様がみられます。銘をもつ道具を茶室内に取合せると、「銘」による連鎖にて、思いがけぬ楽しい、珍しい感興を心の内に湧かせることができ、銘の効用がみられるところです。

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「形(なり)、コロ」
利休の高弟、山上宗二が著した『山上宗二記』に、この言葉が見える。
「黒キハ古キコヽロ」
『宗湛日記』天正15年(1587)1月12日の条に見える。神屋宗湛は利休の茶会に招かれ、そこで利休が語った言葉として書きとめている。
Japanese Tea Culture

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