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茶の湯の道具には、「名物」と呼ばれるものがあります。「名物」という言葉は、「古来有名な物として、また銘を付けて愛玩されてきた器物」という意味ですが、その道具自体の価値はもとより、所持者や伝来によって、別格のものとして分類するために呼ばれた言葉です。
茶の湯の歴史の中では、「名物」という言葉は、たとえば織田信長が茶道具の名品を集めた政策、「名物狩り」などにもみられます。江戸時代に入りますと道具への興味も茶人の中で高まり、その当時伝来していた名品を評価・分類しようとして、「名物」という言葉が使われるようになりました。
一般に、「名物」には「大名物」と「中興名物」などと呼ばれるものがあります。この基準は、江戸時代の大名茶人、松平不昧が茶道具の体系的な整理を目指して著した『古今名物類聚』で述べた分類法のようです。そこでは、千利休の時代以前の名品を「大名物」と呼び、江戸時代の大名茶人の小堀遠州の鑑識によるものを「中興名物」と呼び習わしています。あるいは、この分類に、利休時代のものを「名物」と呼び、「大名物・名物・中興名物」と三種類に分けることもあるようです。また、道具の所持・伝来によっては、出雲藩松平家に伝えられた名物を「雲州名物」松花堂昭乗のいた石清水八幡宮滝本坊に伝来した名物を「八幡名物」、摂津石山本願寺に伝来していた名物を「本願寺名物」などと呼ぶこともあります。
いずれにせよ、さまざまな名物道具を採りあげた書物である「名物記」が多く伝来しています。また、「名物」という用語ではありませんが、室町将軍家の所有の道具を「東山御物」、徳川将軍家の所有の道具を「柳営御物」とも呼びます。
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Japanese Tea Culture

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