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さて、このたびの取合わせのなかで、どうしても皆さんに手にとって賞翫していただきたいと思っていたのが重要文化財の「雨漏茶碗」です。
数多く拝見してきた高麗茶碗のなかでもっとも深く私の心を捉えているのが、国宝の「喜左衛門井戸」(孤篷庵蔵)とこの「雨漏茶碗」の二碗です。
皆さんそれぞれにご自身の感性で、この茶碗を味わっていただきたいと思いますが、このような茶碗は中国人や日本人には造れなかったもので、質朴な作風でありながら、陶工の精神がおのずから作用して、力強いロクロ目のめぐる姿にはいわれぬ風格と存在感がそなわっているのです。
おそらく16世紀中葉の作と考えられますが、井戸茶碗と同じく、その風格が、侘び茶の茶碗にふさわしいものとして茶の世界で脚光を浴びたのです。
いま一つの茶碗は鼠志野茶碗の代表作として、やはり重要文化財になっている「山の端」と名付けられた茶碗です。
鼠志野としては下地の鬼板の化粧がけがやや薄かったようですが、それがかえって茶碗に品性をもたらしています。
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