また、遠く安土桃山時代に目を向けてみますと、千利休と池坊専好(初代)の名が浮かび上がります。同時代を生きた二人を結びつけたもののひとつには、花があると思うのです。古いいけばなの書『雫流伝書』に、それぞれの名が記された抛入花の絵図が見られることは、意外に知られていません。池坊が花をいけることはもちろんですが、お茶の席にも花は欠かせないものです。互いに日本の美を磨き上げる立場にあった者たちの、美に共鳴する心が垣間見られるようです。
そうしたあまり知られていない歴史のひとこまを踏まえた物語が、本年6月に公開される映画「花戦さ」でございます。千利休との深い絆を軸に、池坊専好が当時を懸命に生きた人々の思いを背負い権力者に対峙する・・・という筋書きでございます。今よりももっと京都が狭く、文化の密度が濃かった時代、それぞれの文化を担う者同士が濃密な心の交流を持っていたと考えることは、なんら不自然なことではありません。
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