『江岑咄之覚』解説

表千家に伝わる四代家元、江岑宗左自筆の茶書。一冊。
江岑宗左が、おもに周囲の人から聞いた話を書きとめた茶の湯の聞書で、百六十箇条の一つ書きからなる。内容は、利休を中心として、それ以前の茶の湯初期および利休と同時代の茶人や道具に関する伝承が中心である。本書の特徴は、江岑が実際に話を聞いた人の名を三箇所に記していることである。それは、徳川将軍家茶堂の山本道句、奈良の塗師で道具の修復技術と鑑定にすぐれた藤重藤元、藤厳父子である。『逢源斎書』は、江岑が父の宗旦から聞いた話を書き留めたものだが、宗旦以外にもいろいろな人から話を聞いていたことがわかる。