
「珠光の物語とて、月も雲間のなきは嫌にて候。これ面白く候」と金春禅鳳(こんぱるぜんほう:1454~1530)がその著書の『禅鳳雑談』に書いています。村田珠光が、月は満月で煌々と輝いているよりも、雲がかかって見え隠れしている方が好きだと言ったのに共感し、それを「面白い」と言っているのです。
禅鳳や珠光が生きた室町時代は、現在も伝承されている日本の文化が数多く花開いた時代です。それまでの文化は当時の先進国中国の模倣の部分が多く、完璧なもの、完全なもの、豪華なものがよいとされていました。それに対し、不十分なもの、不完全なもの、簡素なものに美しさを見出したところが日本的と言われるのでしょう。能楽師禅鳳と茶人珠光の交流の中に、共通の美意識が感じられるエピソードです。
能は能舞台といわれる専用の劇場で演じられますが、この能舞台はたいへん簡素な作りになっております。4本の柱にささえられた屋根付きの舞台に装飾といえば松が描かれた鏡板といわれる背景があるのみ。侘びた風情の茶室に似ているかもしれません。その簡素な舞台とは対照的に能の役者が着ける装束は唐織など美しく豪華なものが多いのです。さながら、名物の茶器の如しです。
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 片山 九郎右衛門 氏 (かたやま くろうえもん) |
観世流能楽師シテ方 片山家九世当主
昭和5年
京都に生まれる
昭和11年
仕舞「猩々」にて初舞台を踏む
昭和60年
片山九郎右衛門を襲名
平成13年
重要無形文化財指定・認定
(人間国宝)
平成21年
文化功労者
平成22年
観世流宗家より「雪号」を贈られ
片山幽雪を名乗る
平成27年
1月13日にご逝去されました
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片山家のこと |
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