京都の町屋では11月28日を中心として「お火焚き」という行事が催されます。ことに仕事に火を使う風呂屋や染色業では、大事な行事とされます。昔はあちこちで盛んに火が燃やされたと思われます。如心斎時代の「聞書き」にお火焚きの日に茶事を催すには周囲が明るすぎるので雨戸を建てるとあります。 一般家庭では、「おくどさん」(ご飯を炊く竈)に火をくべて、火の用心を願います。今はほとんど行われることがなくなりました。第一台所に「おくどさん」がありません。それでもお供えとそのお下がりを家族全員に振る舞う習慣は残っております。お火焚き饅頭10個・みかん10箇・粟おこし1包みをお盆にのせて家族や使用人の一人ずつに配られます。子供のころには最も楽しみな行事で、そんなに沢山のおやつが得られる機会が少なかった時代に、箱などに残しておき数日間大事にゆっくりと味わったものでありました。
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