世界の喫茶文化
アジアの山奥で人類と出会った茶は、数千年の歴史の間に世界の隅々にまでひろがりました。
そのひろがり方を見ると二つの段階があります。一つは8世紀から9世紀にかけて、中国の 唐代の巨大な文化を背景に中国の周辺諸国にひろがった段階です。日本や朝鮮半島あるいは中央アジアもこのときに茶を受容しました。こうしてアジアの喫茶文明圏が成立しました。第二の段階は15世紀から17世紀の大航海時代とそれに続く時代です。それまでアジアに限られていた喫茶文化は一挙に西欧社会にひろがります。ことに18世紀以降、イギリスが世界各地に植民地をもつ時代に茶はそれぞれの植民地にイギリス文化としてひろがりました。産業革命のなかで近代化が進むと、世界中でカフェインを含んださまざまな飲みものが大流行します。茶もその一つで、イギリスを中心とした紅茶文化圏、中国を中心とした緑茶文化圏、さらにその間にウーロン茶などのさまざまな茶が世界各地で飲まれるようになります。
こうした長い茶の歴史のなかで一貫して茶の文化を持ち続けているのはアジアです。ことに日本は11世紀に誕生した茶の古いスタイルをこんにちに伝えています。それが抹茶です。日本にはそれ以外にもさまざまの茶が楽しまれていますが、こうした最も伝統的なものと最も新しいものとを同時に含みこんでいるところに日本文化の特徴がありましょう。
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唐代 とうだい
618-907。高祖李淵が隋にかわって中国を統一したことにはじまる。
大航海時代 だいこうかいじだい
15-17世紀前半、ヨーロッパ人が新航路や新大陸を発見したことにより、東西の文化が遭遇した時代。
産業革命 さんぎょうかくめい
機械制大工業と資本主義を中心とした改革。はじめ1760-1840年代にイギリスで展開され、のち各国にひろがった。
Japanese Tea Culture
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