茶の湯を成り立たせているものには、茶室や露地、亭主が客をもてなすためのさまざまな道具類があります。
これらの道具類を眺めてみますと、たとえば掛物には「絵画や書」、あるいは「紙や裂(きれ)」の文化が見られます。同様に、茶碗や花入・水指・茶入などには「土」の文化、釜や風炉や建水などには「金属」の文化、棗や茶杓や菓子器などには「漆塗り」の文化などとともに、木や竹などの「木工」の文化が見られます。
すなわち、茶の湯の道具には、日本の伝統工芸の文化が結集しているといえるのです。また、茶の湯の道具は、これらの伝統工芸の中でも、きわめて技術的・芸術的水準の高いものが用いられますので、茶の湯の文化は、日本の伝統工芸の技術水準や伝統産業を支え発展させる背景にもなっているのです。
ところで、抹茶の風習は中国から伝来したものですから、当然その道具も、当初は、中国伝来の輸入品が用いられましたが、それらの輸入品を「唐物」と呼びます。しかし、茶の湯が日本文化にとけ込んで、階層を超えた人々の生活文化に発展しますと、当然国産の道具類が生産され用いられるようになりました。これを「和物」と呼びます。あでやかで高価な唐物道具から、質素・枯淡な和物道具への展開には、日本人の美意識のありようもうかがえるでしょう。同時に、これらの道具類には、つかい手の工夫がなされ、作り手のさまざまな意匠が施されるなど、客をもてなすための工夫がなされます。そしてまた、その由来や伝来などにも興味ある背景を持つものもあり、茶の湯の道具は、茶の湯を構成する大きな要素でもあるのです。