秋から冬へと季節がゆっくり移り変わってゆき、師走を迎えました。なんとなく慌ただしい気持ちになりますが、こんなときこそお茶に招いて、一年を振り返りつつひとときを過ごしたいものです。
先月炉を開き、また口切りを迎えてのこの時期は、式正の正午の茶事でお招きすることが多いのですが、秋から冬の夜長を楽しむ「夜咄(よばなし)」というものがあります。
夜咄では、日が暮れるころを目安に案内を出し、茶席に招き入れるとまず薄茶をすすめます。寒い夕刻にお越しいただいたお客様への心づかいです。後は炭点前、懐石、中立ち、濃茶、薄茶と常の茶事のように進んでゆきます。
夜咄では花を生けることはしません。代わりに禅僧の持つ払子(ほっす)や如意(にょい)などが床飾りに使われます。
手燭や小燈など、ろうそくの明かりの中でゆるやかにすすむ夜咄の茶事は、しみじみとした風情が感じられます。
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