2月は、節分です。3日の稽古日には、「大津絵の鬼の画賛」の掛物を掛けるのが習いになっています。片方の角の折れた鬼が、墨染めの衣を着て、胸には鉦、右手に撞木、左手には奉加帳を持っています。お布施を乞うて歩く鬼の姿にはユーモアを感じます。これに吸江斎が「不苦者有智」(ふくわうち)と機知に富んだ当て字で以て、面白く茶味あふれる賛をしています。
この日の夜には宗匠方御家族が豆撒(ま)きをするのですが、宿直の玄関も一緒にさせていただきます。御祖堂や不審菴、残月亭、松風楼といった所や、茶道会館、台所など撒く箇所は数カ所になります。
雨戸を開け、白い息を吐きながら「福は内」「鬼は外」と、暗闇の外へ豆を撒くのは、厳しい寒さの内にも、春の訪れを感じます。豆撒きが終わると台所さんから豆が数個入った袋をもらい、近所の本法寺へ持っていくのが習いになっています。最近は宿直の玄関が鬼の格好をし、宗匠方のお子様と一緒に豆撒きをして節分を迎えるのが楽しみです。お子様方は、考えもつかないような所へ豆を撒かれますので、次の日、引き出しの中や座布団の下、着物の袖などから豆が出てきたりして、思わず笑いがこみ上げてきます。