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家元初釜 |
表千家様が主としてお使いになる菓子器は、縁高折、食籠といった蓋付きのもので、初釜における常盤饅も食籠で供されると伺っています。
お客様は、菓子器がご自分の前に来て蓋をお取りになり、初めて中の饅頭を目にされるのですが、茶室という薄明かりの空間にあって、中から現れた饅頭の白さに、夜の雪明りのような風情を、お感じになることと思います。あるいは、初釜でご覧になるその白さに、いつの年もお心を新たにされる方が、いらっしゃるかもしれません。
さらに饅頭を割ると現れる緑餡は、まさにその時期に相応しく、雪を被った瑞々しい松を思わせ、お客様のお心を一層引き込ませるのではないでしょうか。
この緑餡は、通常のものより濃い色でお作りしています。茶室のほのかな明るさの中で最も鮮やかに見える色合いで、お客様に美しくご覧頂けるようにということを考慮し、お家元とともに作り上げたと言われています。
光、器、菓子、その細部に至るまでの効果を計算しつくされた繊細なお心遣いからは、ご亭主のどこまでも行き届いたおもてなしの精神を、感じずにはいられません。
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