夏に葛のお菓子が多いのは、涼しさを求める他に葛が滋養強壮の生薬としての意味も含まれているのではないかと考えられます。
また、寒天を用いたお菓子は、のど越しのよさと共に暑気に疲れた身体を砂糖を多く摂取することで癒そうとする役目もあるかと思います。夏季にはお菓子の腐敗を防ぐために、少し割りを勝たせるといって砂糖の量をふやす事が行われていました。こうした身体のためをも考慮した「もてなし」が古くより生活の知恵として行われてきたものです。近頃のように「甘くないものが美味しい」という誤った考えや知識でなく、素直に「美味しい」「身に付く」という気持ちでお菓子を食べるのが、亭主のもてなしのこころへの応え方であろうかと思っています。茶の湯は健康のためにあるのではなく他に大切にしなければならぬものがあると信じています。お菓子の役割も単に甘いお菓子であるだけでなく、主客の思いの通じるように菓子屋はお菓子を作らしていただくものと思っています。
|