京の町に祇園囃子が聞こえる頃から京の夏が始まります。梅雨明けは山鉾巡行の頃とはいえ京菓子も夏の菓子へと変わっていきます。
夏のお菓子、とりわけお茶で用いられるものは「葛」や「寒天」を用いたものが主となります。どちらのお菓子も「透明感」と「ひんやり」とした食感が涼しさを感じさせてくれるものとして大切に古くより用いられてきました。この頃のようにどちらの家庭にも冷蔵庫があり、いずれの部屋にも冷房がある時代とは異なり、少しの風の動きにも涼しさを感じ、風鈴の音にもこころを動かされてきた人たちが、こころをこめて「もてなし」として用いてきたのがこうした夏のお菓子であります。今から五十年程前の人たちは夏の日常生活では井戸水の冷たさより冷たい温度は知らなかったといっても過言ではないと思っています。それだけにこの葛や寒天を用いた透明な冷たさを感じさせる食感を大切にして楽しさを食べていたと思われます。
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