家元の初釜にきまって使われる薯蕷饅頭です。外観は変哲もない薯蕷饅頭ですが、割ってみますと中から若草色の餡が現れます。まさに雪の中からの草萌えを彷彿とさせます。碌々斎宗匠のお好みと伝えられております。
今の世の中では、自由に複製が許され同じ様な物がいずこでも作られますが、江戸時代の封建制度のもとでは、特に主従の間で、忠実に追従すべきことと、模倣は認められないことが明確にありました。そのなかから、自らの新しい発想が求められ開発力を養ってきました。近年の自然科学における顕著な功績も、人のやらないことをなし遂げる、失敗を注意深く観察する所から成功を導かれました。
菓子の世界でも、自らの名物となる菓子を必ず持ち、簡単にまねをしない掟がありました。その中で新しい発想が生まれ淘汰され現在の京都の菓子の伝統を伝えています。
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