新春の茶事で最も重宝されるのが「雪餅」です。真っ白のキントンは、山芋と砂糖で出来ていて、中の餡は白小豆をクチナシで色づけしたものです。つくね芋と呼ばれる山芋は地上部の葉が枯れたあと、秋に収穫されますが、直ぐに使いますと、アクが強く摺り下ろされると黒く色づいてしまいますが、この時期になると白く綺麗に仕上がります。ただ持ちが悪く、茶事でも菓子の時間に合わせて注文しておく必要があります。昔は茶事に雪餅を5個注文しますと、「お茶事ですかよろしいですな。正午ですか。」と尋ねられ、かえって喜んで時間に合わせて自転車で配達してくれました。今では一般的ではありませんが、菓子屋が直接縁高に盛りつけてくれたといいます。菓子が柔らかく、取るつもりで黒文字を突き刺すと菓子はとれずに黒文字だけ上がってきたという話も聞きました。
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