
お茶とお香に親しみながら、永年考え続けていることがあります。それは二つの芸道文化の共通点と相違点に関することです。
無事に大学生となって、お茶とお香のお稽古を始めました。十年間ほど、それなりに真面目にお稽古に通った日々がありました。それぞれに、育ててくださる先達の方々に数多く恵まれたおかげです。幅広く奥行き深く、興味を絶やすことなくお稽古を続けることができました。
お茶のお稽古は、釜座の堀内家にご縁をいただき、大層恵まれた環境で学ぶことができました。内弟子として学ばれる方々と世代的に近かったこともあり、常に手伝い手の数に加えていただき、方々へお供をする機会をたくさんいただきました。お稽古場はどうしても女性のお社中が断然多く、その分、内弟子だけが集まられる特別の機会に准メンバーとして加えていただき、全く違った楽しさを教えていただきました。茶の間でみんなが集って一息入れる「茶の家」の団欒に初めて参加を許された日、「ハイ、先輩達にお茶点てたげて・・・」と丸盆に載ったお道具をわたされて、ドギマギしたことを覚えています。
堀内家の内弟子の皆さんが「夜咄」の稽古をされることがありました。みんなが客となって席に入られるため、水屋の勉強にと宗匠の後ろに一人控えて時を過ごす機会となりました。何がどうなっているのか何一つ理解しないままに終わってしまいましたが、台所で大急ぎでいただいたご飯の美味しかったこと。あれが、初めての懐石とお茶事の体験だったと後になって理解できました。腰掛待合の声をはじめ、あらゆる音がいつになく耳に響いた記憶があります。
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 畑 正高(はた まさたか)氏 |
(株)松栄堂代表取締役社長
昭和29年
京都に生まれる
昭和50年
表千家不審菴入門
平成10年
松栄堂社長に就任
平成16年
ボストン日本協会より
セーヤー賞受賞
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松栄堂のこと |
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