職家の仕事は、十の家で茶の道具のすべてが整うようになり立っております。わたしの家は表具屋ですから、茶掛の表装がおもな役割です。また、風炉先屏風や紙釜敷、莨入など紙全般をあつかいます。
それから、千家の茶室のふすまや障子、腰張などの建具類もさせていただいております。不審菴の太鼓襖や残月亭の青海波の襖にも、補修を承ったときの思い出が詰まっています。障子は、定期的に張り替えのお指図をいただいております。
お茶の道具は皆そうかもしれませんが、わたしのさせていただくものも道具一つが際立って美しいとか美を極めるとかという存在ではないと思っています。表具であればご染筆された方の筆致と調和し、風炉先であれば点前座の道具組を引き立たせ、襖や障子が茶室の造りや素材にとけこむことで、道具に命が吹き込まれると思っております。互いの道具が互いの存在や勝手とともにある。それぞれの役割を生かし合う、ということでしょうか。これは稽古で教わった主客の心のかよいとも通じることではないでしょうか。
これからもかわらずわが家に伝えられてきたもの、注文を受けお預かりしたご染筆を仕立ててお納めするという表具屋の職分を大事にしたい、と思っています。
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