
原文は、
ほめらりやうと思ていたすにて無之(これなく)、なくさみに致(いたす)と被仰候(おおせられそうろう)
とあります。何とよい言葉ではありますまいか。
われわれは、いつも「上手といわれたい。人に誉めてもらいたい」という気持ちが先に立ってしまい、そのことが結果としてことを駄目にしてしまいます。良いものを作りたいとか、美しいものを作りたいという欲をサラリと捨ててしまう、というより、そんな欲がそもそもないからこそ、井戸茶碗や刷毛目の素直な茶碗が生まれるのでしょう。
「なぐさみ」というのは楽しみという言葉に置きかえてもよいでしょう。楽しませて頂いているのですから、もうそれで十分です。その上誉めて下さるのでしたら、それは付録のようなもの。そんな気持ちで無心に、しかし一生懸命に作ったものであればこそ、宗旦の竹花入は人びとの心をひきつけたのだろうと思います。
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 熊倉 功夫(くまくら いさお)氏 |
林原美術館館長 表千家常任顧問
昭和18年
東京に生まれる
昭和46年
東京教育大学文学部博士課程修了
平成16年
国立民族学博物館名誉教授に就任
林原美術館館長に就任
表千家常任顧問に就任
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林原美術館のこと |
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