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 村井 康彦(むらい やすひこ)氏 |
財団法人京都市芸術文化協会理事長 国際日本文化研究センター名誉教授 滋賀県立大学名誉教授
昭和5年
山口市に生まれる
平成22年 瑞宝中綬章受章
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秋ちかき 心の寄るや 四畳半 私の好きな句ですが、この句からどのような状況を思い 浮かべられるでしょうか。
― 秋も近い晩夏の一日、心を許す仲間たちが行なった 茶会の句でしょう。
― 秋の近づく気配のなかで、四畳半という限られた空間 で心を寄せ合う茶会の句。
―「心の寄るや」は、心を寄せ合うというより、おのずと 寄り合うという感じなのでは?
― そう、そこなんだよ。それが四畳半だからこそ意味が あるんだ。ところでこれ、だれの句?
いや、皆さんの解釈、すばらしいですね。これは松尾芭蕉の句です。詞書によって元禄七年(1694)六月二十一日、大津の門人、医師望月氏の木節庵に俳友相集った時の句と知られるのですが、
茶会の句といって差し支えない。そこでわたくし流の評釈を試みてみました。
秋ちかき 心の寄るや 四畳半
すなわちここには人の心を寄せ合う時間と空間の果たす役割が巧みにうたい込まれており、
どの言葉も他に置き換えることができません。さりげない言葉遣いですが、磨き抜かれた用語であることに感歎します。
しかしこの句の眼目が四畳半にあることは確かです。この句には俳句に及ぼした四畳半に象徴される草庵茶の湯の影響が認められるのです。
茶会(における人間関係)のイメージが下敷きになっている、あるいは俳席と茶席のイメージが重層しているといってよい。
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