表千家四代の江岑宗左が、千家に伝わる様々な話を聞いて書きとめた『逢源斎書』の中には、少庵に関する貴重な伝承も見えます。今回は、その中から利休と少庵にまつわる伝承を紹介します。
少庵が利休を茶の湯に招いた次のような伝承があります。大意を記してみましょう。

少庵は二条に屋敷を持っていた。太閤様の時、京都の釜座から衣棚に道が突き抜けることになり、釜座の道が少庵の屋敷を突き抜けることになったため、今の屋敷をその替わりとして与えられた。徳善院(前田玄以)の時、その二条の屋敷に二畳敷の小間の茶室をつくり、床を四尺に縮めて、おそるおそる宗易(利休)を招いた。利休は機嫌がよかった。さて、利休は大徳寺門前の屋敷に帰り、すぐに大工を呼んで、床を四尺三寸に縮めさせた。