客畳と点前畳の間には、まったく空間を造らないことで、緊張の極みを体験することになる。これはまさに亭主と客との真剣勝負なのだ。
茶道口のすぐ際の壁に釘が打たれ壁床となっている。床側が上座となるので、いわゆる下座床の構え(正客の右側が下座)である。しかし初座を終えて中立ちし、後座入りすれば今度は向板の上に花入が置かれ、そちらが上座となり上座床に変化する。つまり正客の位置が初座と後座では逆になる。こんな使い方をする茶席は、たいそう珍しいことである。
そしてもう一つ特徴的なのは、壁の腰紙、茶道口の 太鼓張りには 啐 斎以前の歴代家元に宛てた手紙の反古が使われていることである(手紙の反古が張られた茶道口の太鼓襖は、特別な場合
を除いて外され、大切に保管されている)。亭主側の壁には一段、客側には二段に反古紙を張ってそれが席名の所以となった。この風情こそ侘の極致ではないだろうか。
利休の作為になるといわれる国宝 待庵は、台目床の二畳隅炉の侘茶席であるが、それと比べても、もっと狭く侘びた空間を創りだしている。
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