この50メートルほどの間、東側には四軒ほどの町屋が並んでいるので、寺之内の角からは、まだ門の姿は見えてこない。
小川通を門前に到ったとき、突然東の空にとても大きくて背の高い武家門の構えをまのあたりにすることになる。
稽古人ならば、背筋のピンと張る緊張の瞬間である。
初めて千家を訪れる人にとって、その奥にある建物や露地にどんな思いを馳せているのだろうか。
表門の歴史は、九代の了々斎が紀州徳川家より拝領されたことに始まる。
しかし、この地に住まいを定められた少庵から四百年の年月の間には、門が据えられた場所も大きな変革があった。
しかし威風堂々としてそびえる表門は、利休より始まる千家の重みを、見事に象徴しているように思える。
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