門をくぐり供待を通り過ごし、左にくの字に曲がる延段に添って歩くと加茂川真黑石を一面に敷き詰めた玄関に到る。ここが本玄関といわれるところである。
直線的な延石や方形の飛石などの角張った切石の続きに、丸い真黑石のほっとした組合が足下を軽やかに進ませることになる。治宝(はるとみ)侯をお迎えしたのもこの玄関であったという。以来特別な来客のみをお迎えする玄関として、日頃は障子を開けることはない。ただ当時とは玄関の位置も変わっている。
その左横に、木戸口と内玄関と呼ぶ常の玄関がある。内玄関は後に紹介する松風楼が建てられた時に、稽古人の出入り口として、また一般の来客用として建て増されたものであろう。
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