その気持の区切りを付けるために、露地口がある。軒下まである背の高い板戸のその中に、もう一枚高さも幅も半分程の大きさの開き戸が真中より少し下げて付けられている。二重構造の開き戸である。
しかも、大きな戸は開かないように内側に差込がされ、客は小さな戸を開け、背をかがめて、しかも足下は敷居より高くなっているから意識して足を高く上げて入らねばならない。
これによって露地に入る客人は、全く違った空間に身を置くという気分を持つことになる。東大寺大仏の胎内(たいない)くぐりではないが、狭い空間を抜けて広々した場所に出ると、世界が変わったように感じられる。
そして一端露地に入れば、そこは世間から遠く離れた山里の中に身を置いている自分に気づく。まさに紹鴎が利休が目指した市中の山居であり、別世界の第一歩である。
こうした仕掛けが、露地から茶室へ入る随所に見られる。
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