ようやく開店したその日は、鯛茶一杯で85銭だけの売上だったそうですが、次第に洒落た店だという評判が立ち、1、2ヶ月もしますと大勢のお客様で賑わうようになったそうです。
この店のお客様には、品格のある美人画の上村松園先生、『茶杓300選』を書かれた高原慶三様、アサヒビールの山本為三郎様、日商岩井の高畑誠一様、美術商の児嶋嘉助様、花道去風流の西川一草亭様、陶芸家の白井半七様がおられました。また、船場の旦那衆も多く、中でも横堀の木材問屋泉平の北尾平兵衛様と堀江にあった質屋の福田平兵衛様は茶の湯に造詣が深く、茶の心得なども教えて頂き、改めてお茶に目を開いたことがあったそうです。
そうした方々のお陰で、店はいつも忙しいことになりましたが、義父は「商売はお金より、よいお客様に恵まれることが大切や」と話しておりました。
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