お茶を習っていると、人を思いやるということを学びます。家の庭に咲いている花も、稽古場に生ければ家族だけでなくお稽古に来られた皆さんにも楽しんでいただける。そんな気持ちがもてなし、思いやるということだと思います。
舞でも、振りを付けるときに、曲に対峙するのではなく思いやる、言いかえれば「添う」というあたたかみが大切なのではないかと思います。曲目やお道具に添い、人に添うことで、いろいろなありがたみを教えられること、それが伝統ということだと思っています。
最近では舞台で舞うことも増えてきましたが、舞妓さんや芸妓さんの芸はお座敷で行われます。お座敷は、一段高い舞台とは違ってお客さんと同じ高さのところです。間口や天井の高さもお座敷によって違います。昔から、井上流の舞は「畳一畳でも舞えるように」と申します。祇園の人たちがお座敷で、お客さんのためにもてなす舞、という心がこめられています。
私ども井上流と祇園の人たちとは、「舞うということ」でつながっています。ですからこの舞に誇りを持って舞ってほしいと思っています。そこに共通の思いであってほしいと思うことは、外側の美しさだけではないということです。
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