
盆の上に置かれた様々な酒器がご亭主の趣味とおもてなしの心一杯に並んでいるのを拝見する時、飲んべえにとっては、応えられない楽しい一時が始まる。
なにも黄瀬戸、椿手、唐津、等の高価な名品である必要は、全くない、むしろご亭主が海外旅行で手に入れられた、変り種のワイングラスやデルフトの陶器、或いは日本の田舎の小さな骨董店で値切りに値切って買われた作者不明の杯、どれもご亭主の人生の思い出が込められており、そうした酒器を手に入れられた時のお話を伺う事は、同じ酒飲み同士、心通うほのぼのとした一時でもある。
さらに、盆の上のぐいのみが正客から順に取り上げられて行くのを拝見していると、お客それぞれの酒器に対するお好みも拝察でき、客同士の親しみが一層増してくる。
又互いに酒器を交換、拝見しそれぞれの手触りや唇に当てた時の感触を楽しみながら、話が盛り上がり、更に美味しい酒を酌み交わす、まさに至福の時が過ぎて行く。
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