それから数十年、わたしは茶の湯とは縁のない生活をしておりましたが、歴史小説を書くようになって、利休居士の物語を書いてみたいと考えるようになりました。
わたしにとっての利休居士は、茶人である以前に「切腹した人」でした。なぜ腹を切らねばならなかったのか──。そんな思いが、四十年以上にわたって、わたしのなかでもやもやと渦巻いていました。その思いを小説作品として紡いだのが、拙作『利休にたずねよ』です。さいわいなことに賞をいただいて、韓国語、中国語、フランス語に翻訳されました。映画も製作され、今年の年末から全国で上映される予定です。利休居士との不思議なご縁から小説が生まれ、映画にまでなりました。まことにありがたいご縁だと感謝いたしております。
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