さて、現代のお酒と昔のお酒、造り方や味わいはどのように違うのでしょうか。たとえば大吟醸酒は高性能の電動精米機で50%どころか、もっと磨いていますが、電気のない昔は足踏み式や水車で精米していましたので、15%ぐらいが限界でした。酒蔵の中の温度管理も難しく、自然に任せていましたから、その年の気候によって、発酵の進み方も違いますので、味も一定ではありません。
このような環境で造ったお酒は酸味や雑味の濃い味だったと考えられます。また、容器も樽に入れて運んでいたので、樽の香りが付いていたはずです。利休居士の時代のお酒は諸白(もろはく)と呼ばれ、今よりずっと酸味や雑味の濃い味わいの黄金色のお酒でした。これは私の想像ですが、お酒は高価で貴重な物でしたから、加水して薄めて飲まれていたのではないかと思われます。そういえば、金魚酒という言葉がありました。薄めすぎて金魚が泳げるほどだというのがその語源です。お酒の保存容器が樽から瓶へ変わったのは大正の終わりから昭和の初めにかけて、お米を高精白に磨いてお酒を造るようになったのは昭和40年代からです。
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