お菓子を美味しく召し上がっていただくために、作り置きはしないこと、季節に応じた菓子を作ることを鉄則にしてまいりました。たとえば栗きんとんは一年を通じていつでも作ることができますが、私の店では栗が収穫できる時季にしか作りません。つまり、旬を大切にしています。これがはたして、商売としてベストな方法かはわかりません。しかし、京菓子は「その季節に食べて、そのものの本当の良さがわかる」と、先代も先々代も言っていたことですから、私もせめてそのことは守っていかなければならないと思っています。
もう一つ、人は機械ではありませんから、菓子を手作りしているとだんだん疲れてきます。すると人の手で作るお菓子は、最初の1個目と200個目ではどうしても違ってくる。しかし、1個目を食べる方も200個目を食べる方も、その方にとっては同じ一つの菓子です。だから心してつくらなければいけない。私が父の教えとして心に刻んでいることばです。
|