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お茶をされる方は、今風の菓子の餡はあっさりめでたよりない、とおっしゃいます。しかし、私の店では四十年前と今とで、餡に入れる砂糖の割合は変わっていません。あっさりというのは、甘さでなくてあと口だと思っています。
私は、餡というものは一定の糖分量しか抱えられないと思っています。ですから、炊きあげた餡を布巾を敷いた木のせいろに移して水気をとり、さらに糖分を含んだ水が下に落ちるようにして、餡が抱えきれない余分な糖分を除きます。その上で餡を漉します。私のところではきんとんのそぼろを、70目というこしきのなかでも、最も目の細かいものを使っています。すると、こし餡でも、そぼろ餡でも口溶けの良いさらっとした餡になるのです。本当のところをいうと、私は父から習った、このような餡の作り方しか知りません。菓子屋さんの集まりなどに出るようになってから、「嘯月」の餡の作り方が特別だったことを実感した次第です。ですから、「嘯月」が評価をいただいているのは、昔から変わることなく、この細かい餡のあと口を守り続けた結果だと思っております。
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