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ワシントンの日本大使公邸で催された「悠々庵」の茶会では、床に而妙斎お家元が書かれた「寿」の軸が掛けられ、「千種」(ちぐさ)という銘をもつ茶壺が飾られていました。スミソニアン博物館のフリアー・ギャラリーが前の年に、ニューヨークのオークションで落札した唐物の大名物です。
この「千種」には、堺の豪商、誉田屋徳林(こんだやとくりん)にあてた「あなたが見つけたこの茶壺は千金の値があり、末永く大切になさい」という千利休の書状が添えられています。東洋陶磁器の目利きとして知られるルイーズ・コートさんが美しい日本語で伝来をそう説明してくれました。
千宗員若宗匠は、十五代の歳月を経て、ワシントンの茶室で千利休ゆかりの茶壺に巡りあわれたのです。褐色の堂々とした壺を手のひらで包むように触れられた場面にご一緒できたことは幸せでした。都会の雑踏でいまも時おり「悠々庵」の一日を思い浮かべると爽やかな気持ちになります。
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