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能の舞踊のエッセンスを集約したものに序の舞というものがあります。一つの演目のドラマの核心部分に挟まってくる舞事で、その人物のまさに一期一会の思いの瞬間を十分強の舞にいたします。 ところが、この舞そのものに特段意味のある形(舞踊でいうところの振付)はなく、ありふれた日常の動作を様式的に整えたものです。その序の舞の最中、観客の皆様が役者の手や足を、あたかも自分のものとし、感じて動いているつもりになって下さった時、思いは際限なく広がってゆくという部分なのです。能の幽玄とはそのようなところをいうのではないでしょうか。 決してお客様に押しつけず、媚びることもない。むしろ自分の中にもぐり込んでゆくような気持ちで、自然に、実にシンプルに舞っている中でお客様と一体化できたら、それも一座建立ということになるのかもしれません。

 
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