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母がお茶を教え始めた頃には、宮田さんは別格の弟子になり「あたしもこんな所でお茶飲んでる暇があったら、お箏を作んなくちゃいけないんだけど、困ったもんだね」と言いながらも「ここで一服頂くのが楽しみでね」と稽古日になると嬉しそうにやってくるのでした。 そんな宮田さんが精魂込めて作ったお箏が出来上がり、母のお箏の師匠の越野栄松(こしのえいしょう)師から「雲井」の銘を戴き、師匠を招いて箏のお披露目のお茶事をすることになりました。 越野栄松師は人間国宝、昭和の名人と謂われた方です。当日どのようなお茶事が始まったのか、私は全く知らないのですが、師と母の弾く「秋風の曲」が粛々と流れてきて、名人の音声を聴くことができたのは、中学生だった私にも忘れられない思い出となりました。 宮田さんは学書院の書家でもあって柳田泰雲(やなぎだたいうん)師のお弟子さんでした。母も泰雲師に師事していて、日展に初入選した時は師をお招きしてお茶事をいたしました。
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