お茶事が近付くと家の中に緊張感が漂いだしますので、茶室に近寄らないようにしていまして、この時も茶室の様子を見ていませんが、宮田さんが大張りきりでお薄の点前をしたそうです。 今考えるとお茶事をするだけでも大変な事なのに、好きとは謂いながら随分熱中していたものだと思います。父と私は時々稽古茶事に呼ばれましたが、二人共飲み方しか知りませんので、ガチガチに緊張した亭主役のお弟子さんの点ててくれるお濃い茶のあられ粒のようなお茶の塊に毎回出合い、お服加減のお尋ねに、父は小さな声で「ご苦労さま」とか言っていましたが、「お茶は大変だね」と早々に二人で引き上げて来るのでした。 母はお茶事が好きで、朝茶、正午の茶事、夜咄と母なりに茶の湯を楽しんだ人生を送りました。
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