この茶碗のような絵付けは、絵唐津でも珍しい部類に属するが、典型的なのはこの向付のような瀟洒な絵付けである。萩のような草花文をスッ、スッと描いた五客組の向付であるが、形、寸法、文様、どれも微妙に違えているので、それぞれに表情がある。ある古美術の本のなかに絵唐津の文様は〝力まず〟〝あせらず〟〝さりげなく〟描かれるとあったが、まったく的を得た表現である。よく見ると口縁だけ四方に変形させ、やや内に押さえたりしてなかなか神経の行き届いた作りでもある。中に何の料理が入っているか、のぞかないと見えないため、のぞき向付と言ったりもするが、我が家では、昔よくこの向付に、イカとウニの和えた物を盛りつけ、食べた後は燗酒を注いで、ウニのほのかに香るウニ酒を味わったりもした。 |